それから数日が経過して、学校行事の一環として今日は球技大会が行われる日。女子の更衣室になっている教室にはすでに男子の姿はなく、みんなジャージに着替えていた。
「ねえ、誰かゴム持ってない?髪の毛結びたいのに忘れちゃってさ」
「あるよー。貸してあげる」
面倒くさい、だるいと口を揃えて言っていた派手なグループの人たちもなんだかんだやる気のようだ。
「美波、一緒にいこう。途中で男子のサッカー見にいく?うちのクラスの応援じゃなくてイケメンを拝みに」
「はは、いいよ。昨日三年の先輩と電話してて、打ち上げは俺らのところにおいでよって言われたよ」
「え、もしかして二組の先輩?いいなあ。私も行く!っていうか美波に付いていくから」
きゃっきゃと騒がしい中心には美波がいて、美波の化粧は今日も派手。もちろん私と目を合わせることなく、大人数を引き連れて廊下に出ていった。
……はあ。私も着替えなくちゃ。
女子はバレーだし、ボールが頭に当たったらヤバいどころか、そのまま死ぬ可能性もある。
一応、担任には休みたいと言ったけど、もうチームを振り分けているし、正当な理由がない限りは認められないと流されてしまった。
私は来る途中で買ったミネラルウォーターのフタを開けて、カバンから小さなポーチを取り出す。
中には小分けにした複数の薬。飲んでも飲まなくても寿命は変わらないけど、体育館で倒れて大騒ぎは起こしたくないと、私は五つの薬を喉の奥へと一気に流しこんだ。