……ガチャッ。

と、その時。リビングのドアが開いて無条件に私の心臓が跳ね上がる。帰ってきたのはスーパーの買い物袋を持った晴江さんだった。

な、なんで?


壁にかけられた時計の針はまだ2時前を指していた。もしかして早番の日だったのかもしれないと思い、気まずさで自然と目が泳いでしまう。


「学校はどうしたの?」

「……早退、しました」

歯切れ悪くぼそりと答えた。


「具合でも悪いの?」

「いえ、平気です」

「平気だったら早退なんてしてこないでしょう」


晴江さんは呆れたように買い物袋をダイニングテーブルへと置いた。同じ空間にいるのに私はすごく緊張していて、晴江さんとふたりきりになるのが一番苦手。

だから話し方もよそよそしくなるし、タメ口を使ったことは一度もない。


その距離感は一定を保ったまま変わることはなく、叔母と姪の関係だけど、他人よりも私たちは他人行儀だ。


「いつもこういうことをしてるの?」

「……え?」

「家に誰もいないからって無断で帰ったりしてきてるの?」

言い方にトゲを感じてチクリとした。


家に誰もいない時には帰ってきたらダメなんだろうか。別に悪さなんてしないし、泥棒みたいになにかを盗んだりはしないのに。

私の無言を肯定だと受け取った晴江さんは、さらに深いため息をはいた。