一番最初に思い浮かんだのは東棟にある非常階段。昨日もあそこにいたし、もしかしたらと急いだけれどそこには誰もいなかった。
次に多目的教室、教材室、幽霊が出ると噂の第三音楽室と授業をサボれそうなところは一通り確認したけど、海月は見つからない。
色々と考えた結果、最後にたどり着いたのは王道の保健室だった。
いるわけねーよな、と思いつつも、ゆっくりとドアを開ける。
いつもキャスター付きの椅子に座って仕事をしてる養護教諭は不在で、保健室はいつも以上に静かだった。
中央には悩み相談などをしているパーティションで目隠しされたテーブルがあり、側には細長い焦げ茶色の腰掛けが置かれている。
壁には視力検査のボードや少しグロい虫歯のポスターなどもあり、保健室は落ち着くというより病院みたいで緊張する。
そんな消毒液の匂いが漂う空間にはベッドはふたつ。
ドア側のベッドは空っぽだった。でも、窓側のベッドには……。
「無用心だな。カーテンぐらい閉めとけよ」
声をかけると、横になっていた身体が俺のほうに向いた。
それは紛れもない海月だった。
当てずっぽうでここに来たけど、まさかいるとは思ってなかった。