「ちょっと、男ふたりが並んで歩いてると邪魔なんだけど」


ぶっきらぼうな声が飛んできたと思えば、そこには岸は岸でも美波が不機嫌そうにこっちを見ていた。



自分のクラスが書かれた一覧表を確認した時、真っ先に目に入った名前が岸美波だった。



どういうイタズラか岸とも同じクラスになったけれど、一緒にいるグループが違うので教室では絡むことはあまりない。でもこうして用があれば普通に話すし、俺が声をかけても無視したりはしなくなった。



「っていうか、沢木くんしつこいんだけど」


岸と同じクラスになれて一番喜んでいたのは沢木かもしれない。どうやら岸のことをまだ諦めていないらしい。


以前の岸は男に媚びばかりを売っていたイメージがあったけど、そういう猫被りは止めにしたようだ。


前のほうが良かったとガッカリしてるヤツもいれば、沢木みたいにぶれずに追いかけてるヤツもいて。岸はしつこい男たちをあしらいながら、刺々しい性格を隠すことなく学校生活を送っている。