そして、三か月しか生きられないと言われた私が一か月も長く息をした二月の中旬。
今まで頑張ってくれていた心臓が、静かに動きを止めようとしていた。
「……海月っ!」
ベッドの周りには晴江さんや忠彦さん。美波に三鶴くん。私の一番近くには佐原が駆け付けてくれていた。
みんなから交互に呼ばれる名前が、遠くに聞こえてくる。
もうすでに全身の感覚がないというのに、手だけは強く握られているのが分かって、この温もりは間違いなく佐原のもの。
「海月」
佐原はやっぱり泣いていたけれど、叫んだり取り乱したりはせずに、ただじっと私のことを見つめてくれていた。
視界が、ぼんやりとしてる。
でも、私はみんなの顔を確かめるように視線を向けたあと、佐原に向かって精いっぱいの笑顔を見せる。
それに応えるように、佐原も泣きながら笑った。