言う、という選択肢が私の中になかったのだ。
ひとりでなんとかしようと、できるだろうと、思っていたから。
「……なにそれ、ふざけないでよ!」
叫ぶような声が響いたあと、美波はそのまま病室を出ていった。追いかけようとする忠彦さんを「今は逆効果だと思います」と、止めたのは佐原だった。
なんとなく、佐原は美波の気持ちを理解しているように感じた。もしかしたら私の知らないところで、ふたりでなにかを話したことがあったのかもしれない。
そのあと、担当医の先生が病室に入ってきて、私の病気についてより詳しい説明が晴江さんと忠彦さんにされた。
やっぱりふたりは最後まで状況を飲み込めていないような顔をしていた。