「また食べにいけばいいよ。ポイントカード作ったし、スタンプ貯まるとオリジナルのマグカップが貰えるって書いてあった。二個貰えるようにまた行こう」
離していた手を再び佐原が握ってくれた。
そんな佐原を私はじっと見つめる。手は繋いでくれるのに、私がこうして視線を送ると佐原は必ず照れる。
「な、なに?」
寒さのせいだけではない、耳の赤さ。そういうところが少し可愛い。
「佐原は前に戻ったね」
「ん?」
「出逢った頃の佐原に戻った気がする」
私の病気を知ったあと、佐原は元気がなかった。
いつも私の気持ちなんて関係なく踏み込んできたのに、怯えてるような目をしてた時期があった。
でも今は出逢った頃のまま。私がなにを言っても、なにをしてもめげないって感じで、強くて引かない瞳をすることが多くなった。
「それっていい意味?」
「分かんない」
私は誤魔化すように笑った。
もしかしたら佐原は、強いふりをしてるだけなのかもしれない。
大丈夫なふり、動揺してないふり。
それでも佐原は、私の前で弱いことは言わない。そのぶん、私が弱くなれるようにしてくれている。
ごめんね、なんて言えば佐原は怒るだろうけど、私はやっぱり佐原に大きなものを背負わせてしまったと思ってる。
私と出逢わなければ、なにかが違っていたら、佐原は佐原のまま友達と遊んで、なにも考えずに毎日を過ごせていたのにって。
でも私……きみがいないともうダメかもしれない。
そう思うほど、佐原のせいで弱くなってしまったよ。