「うわ、なにしてんの?」


ひっくり返ったコップを呆然と見つめていた私のところに美波がやってきた。

「早く拭きなよ」と、私が掴めなかったタオルを美波はあっさりと拾い上げて床を拭いていく。まるで手の中に電気が張り付いてるみたいにまだビリビリしてる。

……こんなの、初めてだ。



「ねえ、あんたってどこか悪いんでしょ?」

拭き終わったタオルを洗濯カゴに入れた美波が言う。


「……悪いって?」

ドキリとしながらも私は平静を装った。


「血色、ヤバい時あるよ。バイトから帰ってきた時もたまに青さを通り越して真っ白な時もあるし」


美波は私のことを見てないようで、すごく見ている。



ぼんやりと病気が進行していく様は想像していた。

こういうことが起きるだろうとか、いずれ日常生活に支障が出るほど身体がダメになっていく覚悟は宣告された時からしてた。


でも、思ったよりも言うことを聞かなくなってきてる身体を隠し通すことの難しさは感じてる。



「隣町に大学病院あるじゃん。そこで検査とかしてもらったほうがいいんじゃないの?」


美波にここまで言われるようじゃ、すべてがバレてしまう日は近いかもしれない。


いつものように「平気だよ」と言いかけたところで晴江さんが通りかかり、私たちの話はそこで終わった。