そんな奔放なお母さんだったけれど、家事や育児の手を脱いたりしたことは一度もなかったし、私にも素っ気ないなりに愛情というものを注いでくれた。
別れて、私がお父さんと暮らし始めてからも、一年に二、三回は一緒に食事に行った。


そういうわけで、当時相談した私を、お母さんは「バカね」と笑った。
そして下戸のお母さんはぶどうジュースを飲み干して、言った。


——「人間はいつか裏切るのよ。だから相手に期待なんかしない。『特別』を作らないに越したことはないの」


だから、お母さんは誓いを立てたはずのお父さんを裏切ったの?
じゃあ、お母さんはいつか私もお母さんを裏切ると思っているの?

聞きたいことは色々あったけれど、私はただその言葉に頷いた。


ちょっぴり過保護なお父さんは、人間関係でうまくいっていなかった様子の私を気にかけて、中学受験を勧めてくれた。
初めのうちはあまりに打ちのめされてやる気も出なかったけれど、お母さんの言葉でなんとなく背中を押されて、受けてみようという気になった。
環境を変えてみたかった。
あそこは息がしづらかった。