「そっか」


弘海先輩はまたしても、あっさり引いた。


「じゃあ、もう一つ質問する」


けれど、私を伺うような物言いはしない。


「あの時、僕は止めてよかった?」


弘海先輩の綺麗な顔が、切なげに歪んで、私は息を飲む。

どうして、そんな表情をするの?
まるで責めるような、後悔しているような、そういうものを孕んでいて。

そんな顔をされたら、私はとんでもなく悪いことをしてしまったみたいじゃないか。
誰かが自ら命を投げ出した現場に居合わせたら、そりゃあ苦しいかもしれない。
でも、少なくとも私の場合は、死ねば幸せだと思った。

生きることが、死ぬよりも辛いことだった。
天秤にかけて、傾いた方に従ったまでで、弘海先輩がそんな表情をすることはない。
いや、される筋合いはない。

私の決断を、悪かったことみたいに言わないで。
誰にだって、選ぶ権利はあるじゃない。