私は結局殆どおにぎりを食べられなかった。
授業中、お腹がなったりしたらそれこそ不興を買うので、無理やり具が梅のものだけ食べた。

ゼミ室を出て、三階に上がると賑やかな二階とは一変、途端に静けさが襲う。
一番奥の自分の教室まで行くのに他の教室の横を通り過ぎたが、殆どの生徒は着席し、机に向かっていた。
賑やかな食事の時間も、予鈴がなる前には終わっている。
一分一秒も惜しい、そんな雰囲気が漂っていた。


私の教室も同じようなもの。
締め切られた戸を引くと、ガラガラと大きな音が鳴るが、みんなもそんなことは気にしない。

私も気に留めずに自分の席に着き、次の教科の準備をする。
次の時間は古典。
教科担当は花純先生。


弘海先輩は、私がゼミ室にいる間に帰ってくることはなかった。
昨日アイロンまで当てたハンカチはポケットの中で、渡せずじまいになってしまった。