私も当時は中学三年生。
今とは違ってみんなの中心にいるような社交的メンバーの一員でもあったし、まだ大人の対応なんてできない子どもだったから、当然反撃を試みた。さっきまで躊躇してたのが嘘のように、水場に出て行って、反対側の蛇口をひねり、手で口の角度と調節して、自分にかかりながらも、弘海先輩目がけて勢いよく水を出した。
そしたら「わーなになに反則!」って楽しそうに笑うから、自然とこっちも笑顔になって、一緒に水を掛け合って遊んでいたら昼休みを半分過ぎていた。

あまりに長い間帰ってこない私を探しに来たその時の友人が「杏那、あんた何してんの!」と呼びに来たから、私も我に返って、結局体育着を水浸しにしてしまっていることに気づいた。

そのまま友人に引きずられるようにその場を後にして、弘海先輩とはそれっきりだと思っていた。
別れの挨拶もなかったし、同級生とは少し違う雰囲気だったから、高校生かな、と思ったくらいで名前も学年も知らなかったし。
でもその翌日の朝、いつものように花壇に水をあげていたら、弘海先輩がやってきたんだ。