水をやり終えると、私は弘海先輩のハンカチをポシェットにしまい、自分のハンカチで濡れていた胸元を拭いて、帰路に着いた。
駅までの道は、またしてもなんの障害もなかった。

プラットホームに降り、白線のすぐ後ろに立つ。
電車はそう時間もかからずやってきて、ぶわりと煽られた風は私の濡れた髪をさらって行った。
ピコンピコン、と電子音が鳴って、扉が開く。
乗り込むと、あっという間に駅は遠ざかっていく。

どんどん、小さく、見えなくなっていく。

もう弘海先輩に会わなくて済む。
そう思うと気が楽ではあったが、何か胸に引っかかるものがあった。