——ピンポーン。


構内アナウンスの合図が流れる。


——「まもなく、二番線に電車が参ります。白線の内側に下がって、お待ちください——」



プラットホームは大体、エレベーター付近に人が集まりやすく、端に行けばいくほど疎らになる。私は何人にも邪魔されぬよう、電車の入り口からそう遠くない場所にいた。
周囲は特別アナウンスを特に気にする様子はない。
各々、本を読んでいたり、スマートフォンを操作していたり、イヤホンから音楽を聴いたりともはや電車にない。
曖昧な列の先頭に立ち、首を伸ばして今か今かと、その時を待っていた。


遠くの方から電車の気配。
風が吸い込まれていく。
とくん、とくんと胸が高鳴る。
足元の揺れが徐々に激しくなる。
ガタン、ガタンと車体が振動する音がどんどん、どんどん大きくなり、正面が駅に差し掛かるのが見えた。


——今だ。


ふわりと上がった前髪を合図に、スクールバッグの柄を強く握りしめ、右足で地面を蹴って、線路に身を投げる。
これで私は自由になれる。
自然と口元が緩んで、目尻に涙が滲んだ。