「全身どこかしこもかなり傷ついていたけど、リハビリと療養を経て、今は飲み会まで顔を出せるようになりました」
ジョッキも持てますよ、と隣の佐藤先生のジョッキを持ち上げ、最後は弘海先輩が笑顔で答えてくれた。その冗談で張り詰めていた空気は穏やかになったが、私の胸の内だけは依然として落ち着かなかった。
四年前のあの日々が、弘海先輩と本当の意味で最後の時間になっていたかもしれないのだ。
想像すると、恐ろしかった。
生きていれば、またいつかどこか出会うかもしれない。
そう思っていたけれど、そうではない。
生きていても、もう会えない可能性だってあった。
私はポケットの中の時計を無意識のうちに握りしめていた。
「そういえば、八城も危うく葛西と同じになるところだったなよな」
突然話を振られて、硬直する。
さっきから日本酒ばっかり飲んでいた倉坂先生が放った余計な一言に、目の前の弘海先輩が箸を止めたのを視界の端で捉えた。
その話は今しなくていいのに。傷を抉るような真似を。
他意がないのはわかっているけれど、頭を抱えたくなる。
「同じこと……?」
今度疑問を投げたのは、弘海先輩の方だった。
おそるおそる顔を上げると、何のことだかわからないと訴えるように弘海先輩がこちらを見ていて、呼吸を忘れる。
先生方は同調するように頷きあっていて、私は弘海先輩を見つめ返すことしかできなかった。
ジョッキも持てますよ、と隣の佐藤先生のジョッキを持ち上げ、最後は弘海先輩が笑顔で答えてくれた。その冗談で張り詰めていた空気は穏やかになったが、私の胸の内だけは依然として落ち着かなかった。
四年前のあの日々が、弘海先輩と本当の意味で最後の時間になっていたかもしれないのだ。
想像すると、恐ろしかった。
生きていれば、またいつかどこか出会うかもしれない。
そう思っていたけれど、そうではない。
生きていても、もう会えない可能性だってあった。
私はポケットの中の時計を無意識のうちに握りしめていた。
「そういえば、八城も危うく葛西と同じになるところだったなよな」
突然話を振られて、硬直する。
さっきから日本酒ばっかり飲んでいた倉坂先生が放った余計な一言に、目の前の弘海先輩が箸を止めたのを視界の端で捉えた。
その話は今しなくていいのに。傷を抉るような真似を。
他意がないのはわかっているけれど、頭を抱えたくなる。
「同じこと……?」
今度疑問を投げたのは、弘海先輩の方だった。
おそるおそる顔を上げると、何のことだかわからないと訴えるように弘海先輩がこちらを見ていて、呼吸を忘れる。
先生方は同調するように頷きあっていて、私は弘海先輩を見つめ返すことしかできなかった。