……いかんいかん、弱気になるのはよそう。
そう言うことをするのはやめたはずだ。
前を向け。
別にそうでなくても、大丈夫。

人間何かを強く願ったときに、脳が都合よく解釈すると言うのはよく起きる現象。
必ずしも本人とは限らない。
同姓同名なんていくらでもいるだろうし。

ただ、もし本当に弘海先輩なら。
例え許してもらえなくても、信じてもらえなくても、一言伝えたいことがあった。


「よし」


一度頬を叩いて、気合いを入れ直す。
ネガティブ禁止。明るく笑顔に。両手の人差し指で口角を上げて笑顔を作る。


「杏那先生、何してるの?」


売店に昼食を買いに行っていた花純先生が戻って来た。
私はなんでもないように装って「笑顔の練習です」と答える。
先生は疑問に思っていそうだったが、特に気にする様子もなかった。


「練習しなくても、杏那先生はいつでも笑顔じゃない?」

「ちょっと思考がネガティブになりそうだったんで」

「なるほどね。ハイこれ、杏那先生のお弁当」

「あ、ありがとうございます」

「さっさと食べて、やることやって、飲みに行くよ!」

「はい!」


受け取った三色丼を前に手を合わせて、パキリと割り箸を割った。