教師も走る十二月。
終業式を一週間後に控えた今日、土曜日は午前授業。四時間目まで終え、掃除もホームルームも終わり、とっくに解散を命じられているのに、スクールバスまで時間あるから、などと適当な理由をつけて、今日も生徒がやってきた。


「あんちゃん先生今日、ちょっと綺麗なかっこしてるのは合コン?」


ポニーテールの桐谷さんが、期待の眼差しで見つめてくる。


「目敏い。でも違う。今日は忘年会」

「ああ、国語科の」

「そうそう。一旦家に帰ろうかとも思ったけど、学校で色々やる事あるから直行しようと思って」

「なんだぁ。てっきりクリスマスのための彼氏探しにめかしこんでるのかと」


意地悪っぽく言ってくるのは、夏木さん。
ベリーショートの似合う、さっぱり系の子。


「ちょっと、私に彼氏いない事ばかにしないでくれる?いいのよまだ。白馬の王子様待ってるんだから」

「そう言う人に限って婚期逃すってよ」


嫌味を言うのは金沢さん。男子も顔負けの身長を誇るモデルみたいな子。
三人は仲良しグループで、良く国語ゼミにも遊びにきていた。
こんな風に先生相手にタメ口を使ってくる生徒と気兼ねなく話をするのも、あと少しと思うと寂しい。

今日の夕方は国語科の忘年会だ。
国語科飲み会行きつけの居酒屋で一年間の労をねぎらう、その場に臨時職員の私も招待にあずかった。