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放課後の教室では課外講座が行われるので、関係ない私は退散。
スクールバッグに必要なものを入れて、教室を後にした。
ここ数日のことなのに、最近はもう、視線も気にならなくなった。
鼻歌でも出てきそうなのを我慢して、玄関に降りていく。
とりあえず一旦帰って着替えよう。
呪いが解けるといっても、制服だと怪しまれる可能性はあるので、弘海先輩の体裁のためにもそれがいいはず。
時間もあるし、ゆっくり準備しよう。
そんなことを考えながら階段を降りようとすると、見覚えのある影がこちらに向かって上がってきた。
最後に会話した時よりも伸びたストレートの髪。ふわりと香る、甘い匂い。
立ち止まると、向こうが顔を上げた。
実に半年ぶりくらいに顔を合わせるのは、美紀。
文系クラスは同じ階でも反対側に教室があることに加えて、授業内容も全く異なるから滅多に会うことがない。
これは、声をかけるのが正解か。
それとも素通りがいいのか。
考えあぐねていると、美紀は一段一段上がってきて、私の前で立ち止まった。
「ウソつき」
突然の言葉に、頭が真っ白になる。
久しぶりの対面にも関わらず、容赦はなかった。
瞠目すると、美紀は言った。