あ、また。壁だ。弘海先輩の、壁。
どこか一線を引いたような口調は私の思っていた反応ではなくて、さわっと波が立つ。
また、何か間違っただろうか。


「……どうして?」

「心変わりは避けられない現実だよ」


今までのことを根底からひっくり返すような言葉に、眉根がよる。
さわさわ、さわさわ。
手に汗が滲んで、ガムの砂糖が手の内で溶けていく。


「……信じろって、言ったくせに」

「言ったよ。確かに言った」

「それだと、私の目の前から消える前提みたい」

「違うよ、消えるのはそっちの方」

「私?」


どうして私?
意味がわからないでいると、弘海先輩は続けた。


「今、教えていいと思っても、僕の方を切り捨てるかも」

「そんなこと」

「ないとは言い切れないでしょ」


気圧されて口をつぐむ。
言い切れない。
現に私はそんなつもりなんて、はなからなかった。