さっき何を思った?
近づいてくるのも嫌がらずに、真っ直ぐ見つめ返しちゃったりして……
これだとまるで、弘海先輩を好きみたいじゃないか。

……好きみたい。
弘海先輩を、好きみたいだ。


心にポッっと生まれた、温かくて甘いもの。
随分忘れかけていた、他人を好きになるということ。
もし仮に弘海先輩が女の人であっても、キスをされてもそれを受け入れられるくらいには、弘海先輩のことが好きだ。

そんなことはあってはならないと鍵をかけた箱は、いつのまにかどこかに消えていた。
代わりに、また生まれたように、弾む心だけが残っていた。


——『じゃあ、僕は?』


あの時は、空気の溶けて行ってしまった質問。


深い関係になって、崩れることを恐れて踏み出せなかった。
弘海先輩との思い出が、苦いものに変わることを考えると、これ以上距離を縮めてはいけないと警鐘が鳴る。
けれど、ここで機会を逃せばもう二度とこんな人は現れないんじゃないか。手を離すな、という自分もいる。



私はどうやら、弘海先輩を——