ぞわりと何か冷ややかなものが背筋を走った気がした。
三年生の応援ゾーンから感じる、視線。
ちくり、ちくりと身体が痛みを伴う。

誰かわからない。
でもきっと誰でもない。
私は気づいていない振りをして、逃れるように、俯いた。

花純先生は「ハート柄のソックスの人ー!」とまだお題の人を探し回っている。
歓声も野次も大きくて、なかなか声が届いていない様子。
そんな中、私は他クラスの生徒に混じって、しかもその勝利に貢献してしまった。

咎めるような視線を感じる。
なかなか狩れない先生を笑い、応援する声がぐわんぐわんと頭に響く。
動悸が少しずつ高まる。
だめだ。
今すぐここから逃げ出したい。
でも、難しいお題のせいで、二位も三位もなかなか決まらない。

聞こえないはずの声が、木霊する。


——「助かった」


スッと耳に届いた声。
深海に引きずり込まれそうだったのが、一気に引き上げられたような気分がした。
顔を上げると、一位を勝ち取った弘海先輩は感心したように笑っていた。