「どうぞ、連れてってください!」

「きいちゃん!」

「先輩! 今はつべこべ言ってる暇ありません!」


きいちゃんに押されて私と先輩は再びインフィールドへ。
背後から1Cの生徒たちが「急いで!」と叫ぶので走らないわけにもいかないのだけど、足が止まってしまう。引き止められた弘海先輩は、私を振り返るとさっと手を握ってきた。


「走ろ」


弘海先輩のその合図で、私も一緒に駆けた。
柄にもなく顔が火照るのがわかる。その瞬間だけは、学年での私の立ち位置も忘れていた。
つけたネコミミが落ちないように片手で押さえながら、出来るだけ早く本部目掛けて走る。まさかの短時間での一番乗りに、審判の生徒も驚き半分で私たちを確認した。

弘海先輩が手にしていた紙には確かに「ネコミミ」と書かれていた。
おそるべし、きいちゃんの情報網。
それから私たちの一位がアナウンスで告げられ、1Cの生徒がいる方向から歓声が起こった。ものの五分。歴代で最速らしかった。
「葛西先生でかしたー!」という生徒からの賛辞に、一位の旗の隣に立った弘海先輩は大きく手を振った。もう用無しかと思われた私も、最後の答え合わせまでは残る必要があるようで、一位をとった興奮のままに弘海先輩の隣に立っていたが、ふと視線を感じた。