「つけないよ?」


そんなのつけていたら間違いなく浮かれてるやつ認定を受ける。
ただでさえ村八分なのに、もっと気まずくなる。
今日だって一日時間を取られるからと、三年生の中には隙間時間に単語帳を開いている人もいると言うのに。
確認も込めて拒否するけれど、きいちゃんは聞く耳を持たない。


「私もウサミミつけるので、恥ずかしくないです!大丈夫です!それに学年でハチマキ付けちゃってたり、リボンつけたりしてるじゃないですか」


何が大丈夫なのか、きいちゃんはそう言って、ウサミミも出した。
右手に二つ派手なカチューシャを持って、ネコミミの方を私に差し出して来る。
そもそもどうしてこんなお祭り騒ぎなカチューシャなんて持って来たのだろう。
確かに、お揃いのハチマキをつけている生徒や、頭のてっぺんにリボンのカチューシャをつけている男子中学生の姿も見受けられるが、それはクラス単位で合わせて持っているものではないのか。


「ていうか、なんで?」

「今から先生対抗の借り物競走あるじゃないですか。お題箱の中にウサミミだかネコミミって書いてあるの見たって聞いたので、持ってきて見ました」

「きいちゃんの担任がそのお題引くとは限らないじゃん」

「でも引かないとも限りませんよね? 別の先生が当てた場合は交渉します」