きいちゃんは私にとって。
でも、強いて言うなら。


「ネコみたいな、存在」

「ネコ?」

「一緒にいても気を使わなくていいって言うか……」


今でこそほとんど毎日顔を合わせるけれど、最初の頃きいちゃんはふらりと朝来ては、何日も顔を見せなかったり、そして忘れた頃にやって来る、気まぐれな子だった。呼び名だって「きいちゃんと呼んでください」の一点張りで、きいちゃんの本名を知ったのは高校二年の春、知り合って半年経った頃だった。
それが今は、今日の授業はダルいとか、顧問の林先生が厳しいとか、他愛のない話をして、花壇の水やり、手入れを一緒にするような仲だ。

どうせこの子もいなくなるのだろう。
そう考えて自分の方から相手にはせずに、受け身で適当に付き合っていたのに、もう知り合って一年以上が経っていた。


なんの肩書きもないままに、こうしてしばらく接してきたから、いざ口に出すのは気恥ずかしい気もするが、私の見解は少なくともそう。
表面を繕わず無関心も隠さなかったのに、きいちゃんは私に接してきたから、ある意味気を使わなくていい存在。


「ちゃんといい意味です」


自分なりに納得して頷くと、弘海先輩も同調した。


「うん。じゃあ……僕は?」