「じゃあ、それを踏まえて。畠本さんって、どんな存在？」


さっきと質問が変わる。
きいちゃんは、私にとってどんな存在。
今まで考えないようにしてきたから、いきなり投げかけられても困る、というのが正直な感想で。


「なんでそれを弘海先輩に言わなきゃいけないんですか」


詰まる所はそこだ。
私が相手にどう思ってるかなんて、わざわざ弘海先輩に言う必要はないと思うのだが、


「僕で練習すれば、本人にもすんなり言えるような日がくるんじゃないかと思って」


ときゅっと口角を上げて、弘海先輩は笑う。

それはそうだけども、と反論は口の中でする。


だって、口にするのも、難しかった。

決めてしまったら、壊れることが前提のような気がする。
何もないのが、平和だと思っていたから、いざ定義してしまうと、その縛りにかけてしまう。
自分の思っていることと、もし相手が違ったら、ということを考えると関係付けてしまうのは少しだけ勇気がいる。

弘海先輩は催促しないが、私がどんな答えを出すのか興味津々の様子だ。
さっきからニコニコ笑顔を絶やさないので、少し気持ち悪いが、嫌味な感じはしなかった。