どうしてだろう。
同じ制服を着た人間が、同じ方向に歩いているのを見ながらそんなことを思う。

今日も私はコンクリートの上を歩き、有限の時間の中を生きている。
手を伸ばしてもあの青空の向こうに行くこともでいないし、悠々と泳ぐ雲さえつかめない。

本当は昨日できなかったことを果たそうと思っていた。


もう一度、線路に飛び込むこと。


死への願望がなくなったわけではない。
今日も薄暗いリビングで、しょっぱいシリアルを食べながら、今日こそは消えてやると決心していた。
でも、できなかった。

死に怯んでしまったのではなく、また邪魔されたらどうしようという恐怖が起こった。
思い出すだけでハラワタが煮えくり返りそう。
名前を思い出すのも嫌気がさすあの人は、確実に私が何をしようとしていたか知っていた。

もしかしたら今日もいて、また邪魔されるかもしれないと思うと足が竦んだ。

失敗したらどうしよう。
その戸惑いが、今日も私をこの世界に留めた。
ぼんやり列に並び、流されるまま電車に乗り込み、気づいたら降りて、通学路を歩いていた。

踏みしめるコンクリートには、朝陽が作る私に影が落ちている。
光で身体は透けていない。
やっぱり私は生きている。

せめて「感情」というものが、昨日線路に落ちて行けばよかったのに、なんてどうしようもないことを考えながら、俯いて歩いていると校門が見えてきた。