「先生は、『友達』の定義ってなんだと思いますか?」

「定義?」


弘海先輩の目線は宙をぐるりと彷徨い、空になった弁当箱の上に落ちた。


「ないんじゃない?」

「え?」


聞いておいてそれはないだろう。
自分の眉間にシワがよったのがわかった。

弘海先輩は、御構い無しに空箱を片付ける。


「正直、曖昧でしょ。恋人とかは告白から始まって付き合いがスタートするけど、友達は『気づいたら』っていうパターンが多くない? 『気づいたら』いつも一緒に行動してて、『気づいたら』当たり前のように連絡とってて、『気づいたら』なんか遠出までする仲になってた」


私も「気づいたら」美紀のグループに属していた。
「気づいたら」移動教室も一緒にして、テスト明けは遊びに行って、色んな話で笑いあっていた。

そして「気づいたら」、裏切っていた。