反対に、お父さんは私の選択を、応援してくれた。
また学校でもうまくいっていないのがわかって、気を遣ってくれたこともあるのだと思う。


——『ゆっくりでいいよ、杏那』



私はあの時、お父さんがいてくれればいいと思っていた。
でもお父さんもお父さんなりに職場で問題を抱えて居たらしい。
唯一甘えることのできる人間に甘えて居た私は、お父さんの限界に気づくことはできなかった。

出勤が早くなり。
帰宅時間が遅くなり。
ご飯を食べる量が減り。
私と過ごす時間がなくなり。
顔を合わせることに少なくなり。

同じ家に住んでいるのに、久しぶりに見たお父さんは痩せて窶れていて、私がいくら話をしても、ご飯を勧めても、休みを取るようにいっても気に入らなかったらしく、言われたのだ。


——『杏那を、引き取らなければよかった』


日曜日の昼のことだった。
それは面と向かって私に投げられたわけではなく、スーツ姿のままソファーで頭を抱えたお父さんが、呟くようにこぼした。
私の今まで保っていた精神の糸も、その一言でぷっつり、切れた。

自分の存在理由を見失って、それで翌日、あんな暴挙に出た。
そして、弘海先輩と最悪の再会を果たした。