翌日、いつも通り登校した。
前の席の美紀に声をかけてから自分の席に行こうと、すでに登校してスマートフォンをいじっていた美紀に「おはよう」と声をかけた。
でも、美紀は返事どころか一瞥もくれなかった。

過去を思い出して、途端に胸騒ぎがした。
聞こえてなかったのかな、ともう一度声をかけようとすると美紀は立ち上がり、「ちょっといい?」と私に退室を促した。

高まる動悸に、これから起こることが予想されて、私はきっと青ざめていた。
でもそれよりも、教室から外の非常階段に出て、向かいあった美紀は、温度のない顔をしていた。


「昨日、芹澤のこと振ったって本当?」


その声音に、怒りがにじみ出ていて私は息をのんだ。
そこまで怒りをあらわにした美紀を見たことがなかったからだ。
沈黙を肯定と捉えた美紀は、質問を重ねてきた。


「振ったときに、芹澤に言った『友達なんて一番信用できない』っていう言葉も、杏那の本音?」


特別は作らないという言葉がウソなら、私は美紀に遠慮して芹澤くんを振ったことになるし、肯定すれば芹澤くんに嘘をついたことになる。
どうしてそこまで知っているのだろうと不思議に思いながらも、何も言えずにいると、美紀は目に涙をためて言い放った。


「私たち、ずっと友達ごっこしてたんだね」


——それは私のセリフだったのに。


私は何も言わせてもらえないまま、美紀はそう吐き捨てると、私を置いて教室に戻っていった。

ひとり取り残されて、笑いがこみ上げてきた。

友達ごっこという言葉は、あまりにぴったりだった。