「ご、ごめん怒鳴って。でもその、バカっていうのは本音。こむぎちゃんは何も分かってないよ。自分が離れれば解決するなんて、私の中でこむぎちゃんはそんなに小さな存在じゃないよ……」

「みくりちゃん……」

「もう、そのくらい大事な友達に、なってるの! そのくらい気付いてよ!」

「でも私、何もみくりちゃんに返せてない……」

「……こむぎちゃんはさ、私のこといつも褒めてくれるよね。でもさ、私もこむぎちゃんが思ってるほど立派な人間じゃないんだ。卑怯なとこも、黒いところもあるよ。普通の女の子と変わらないんだよ」

「私、負担になってたかな」

「ううん、逆だよ。こむぎちゃんが私のいいところをいっぱい見つけてくれるから、いつもきらきらした瞳で慕ってくれるから、こむぎちゃんが思ってくれているような私になろうって、そんな私でいたいなって、頑張れるんだよ。何も返せてないなんてこと、ないんだよ」

 気付いたら私の頬にも大粒の涙が流れていた。でもそれは今まで感じたことのない、熱い涙だった。

「みくりちゃん……!」

 思わずもたれかかってしまった私を、みくりちゃんは優しく抱き締めてくれた。

「みんな同じだよ。だからこむぎちゃんも、自分のことを好きになってあげて。自分のいいところも、見つけてあげて」

「うん。がんばってみる」

 チャリンチャリン、とベルを鳴らしながら、部活帰りの自転車が通り過ぎていった。正門近くの歩道で抱き合っていたことを思い出し、あわてて離れる。
 なんだかおかしくなってしまって、みくりちゃんと二人、涙まみれの顔を見ながら笑いあった。

「でも、グループの子たちが気が合わないって感じるのは、どうしようもないよ。私が悪いわけじゃないっていうのは分かったけど、向こうが悪いわけでもないと思うの。だってそれは素直な気持ちだし、しょうがないことだもん」

 みくりちゃんとは気持ちが通じ合ったけれど、だからと言ってはい元通り、とならないのが友達関係の難しいところ。

「う~ん。でもこのままでいるのはあの子たちのためにも良くないよ。明日から、どうしよう」

「どうしようね」

 菓子先輩がいれば何か名案でも授けてくれただろうか。そう思っていたけれど、次の日私たちの問題は、意外なところから解決することになる。