僕が意識を取り戻した時、両親が側で目に涙を一杯ためて、僕の名前を何度も呼んでいた。

 僕が目を開けたと同時に、慌ただしく看護師も周りで動いていたように思う。

 僕に繋がれていた何かの装置の音が、ピッピと一定のリズムを打っているのが聞こえた。
 
 それが僕の心臓の鼓動でもある。

 僕は生きていた。


 僕はしっかりと目を開けて、そのままの両親の姿を見つめた。


 心配を掛けて疲労していたのもあるが、あの若かった二人を見た後では二人はとても老けて見えた。

 なんだかそれが、無性に苦しく胸がつまる。

 体も痛いが、心も痛い。


 二人に何か言おうとしたが、酸素マスクに邪魔され、弱々しい声では言葉が伝わらない。

 僕が外そうと手を口元にもってこようとするが、手を動かすだけで痛みが全身に走り、僕は顔をしかめた。


 それでもこれだけは伝えたくて、僕は必死で酸素マスクを外し、口を開く。


「お父さん、お母さん、ごめんなさい」


 弱々しいながら、僕はあらん限りの力を出し切って声を絞り出した。

 自分の愚かさを認め、馬鹿な息子であったことを反省した。



 母は首を横に振り、言葉にならずに涙を流していた。

 ああ、この人が病気と闘った葉羽なんだ。



 父もまた同じく首を横に振り、僕が悪くないと否定する。

 ああ、この人が不器用で必死にもがいてた悠斗なんだ。



 そして僕はこの人たちの子供なんだ。


 そう思えた時、僕は自分が誇らしく、そして自分が好きになれるような気がした。


 僕はこの人たちから生を授かった。

 それが無性に嬉しくてたまらなかった。