学校から解放されると、俺は伯母の家に帰らず葉羽の家に直行した。

 葉羽の家の前に立つと、緊張して体が硬くなっていた。

 指までぎこちないまま、ピンとまっすぐにのばして力強くインターホンを押した。

 葉羽も俺の帰りを待っていたのか、家の外にまで廊下をドタバタ走る振動が漏れてきて、その直後勢いよく玄関のドアが開いた。


「お帰り」


 まるで一緒に住んでいるかのように、葉羽は俺を迎え入れた。

 俺は圧倒され、玄関前で突っ立っていると、葉羽は外に出てきて俺の腕を引っ張り家の中に引きずりこんだ。


「ちょ、ちょっとどうしたんだよ」

「いいから、早く」


 葉羽がなぜそんなに慌てるのかわからない。

 そしてされるがまま、俺は葉羽の部屋に連れられた。

 兜も一緒に遊びたがったが、葉羽がダメと追い出した。


「お姉ちゃんのケチ」


 兜の不満を蹴散らすように、ドアを乱暴に閉める葉羽は、いつものか弱い葉羽じゃなかった。

 使命を帯びた責任感を背負った勇者のように背筋を伸ばして、俺をしっかりと見つめる。


「一体、何があったんだよ」

「そっちこそ、昨晩なんであんなこと母に言ったのよ」


「もしかして、怒ってるのか?」

「ううん、そんなことあるわけないでしょ。感謝してるくらいよ」


「感謝?」

「忘れてたこと思い出させてくれたから」


「だからなんだよ」

「これ」


 葉羽は掌を俺に向けて両手を掲げた。