夕食はホットプレートの上で焼いて食べる焼肉だった。

 俺はホットプレートに一番届きやすい席に案内されたが、隣に葉羽が座ったことで箸を気軽に伸ばせなかった。

 またそれが遠慮と見なされて、俺の皿に母親がどんどん肉をのせていく。


「悠斗君、どんどん食べてくれていいんだよ」


 ビールを片手にした父親が勧めると、俺はもうヤケクソで皿の上の肉を食い始めた。

 食事は文句なく美味しかった。
 
 ただ自分が得られなかった家族の姿を見せつけられるのは少し羨まし過ぎた。


 兜は小学生の不思議な感性で脈絡のない話をし、それに耳を傾けて、真剣に受け答えする父親。


 せっせとお肉を焼いて家族に充分行き渡るように気を配る母親。


 愛情をたっぷり注がれた可愛い二人の子供達。


 住み心地のいい大きな家。


 何もかも俺の目に映るものは、パーフェクトの何物でもなかった。


 それとも、それはただ隣の家の芝生が青くみえた、よくある出来事だったのだろうか。

 俺はまだ何も花咲家の事をよく知らなかったに過ぎなかったと気がつくのは、かなり後になってからのことだった。