次の日から、俺は家の玄関のドアを開けるのが怖くなる。

 外に出てもし葉羽に会ったら、どんな顔をしていいのか分からない。

 毎朝、家を出るときドアノブを掴む手が怯えている。


 そして、学校から帰ってくるときも、家が近づくと今度は足に力が入り緊張してしまう。

 葉羽を意識しすぎて、自分のとった行動が愚か過ぎて、謝ることも出来ずに、一人で苦しみの膜をはったようにそこから抜け出せないでいた。


 幸いといっていいのか、葉羽とは目と鼻の先に住んでいながら、その後、暫く会うことはなかった。


 そんな時、夏の暑さが増すにつれ、体調もあまりよくないらしく、貧血が癖になり週に一回病院に行っては点滴を打っているという事を伯母の口から聞いた。


 鉄分不足は女性にありがちだと聞くが、小さい頃から細かっただけに元々食が細いところもあるのだろう、しっかり肉や魚を食えと思ってしまった。

 そしてそれから俺はなぜか鉄分のサプリメントや鉄分が入った食品に目が行ってしまう。

 俺も俺なりに葉羽の事を心配していたと思う。

 意地っ張りのせいで素直にそれが表現できなくて、どこか卑屈になりすぎて、それなのに葉羽からの歩み寄りを望んでるという始末。


 次こそは、次こそはと身構えるが、やっとまた会えたときは、声を出すことなくお互いの目を見て終わるだけだった。