葉羽は俺の態度に失望したのかもしれない。


「悠斗君、なんか変わったね」


 葉羽の声は寂しそうに切なく聞こえた。


「変わってなんかねぇーよ」


 いかにも鬱陶しげに吐き捨てるようないい方だった。

 こんなところで反抗期丸出しになってしまい、それは八つ当たりにも等しい。

 久し振りに会えたというのに、会いたいとさえ思っていたのに、なぜか葉羽の前では自分の弱みを見せたくないように無意味に生意気な態度を取ってしまう。

 それでも葉羽はニコって精一杯に微笑んだ。


「また会えて嬉しい。あっそうだ。あれから手品少しは上手くなったんだよ。今度見せてあげるね」

 葉羽は小学生の頃と同じ態度で、俺に接しようとしていた。

 でも俺には心の余裕がなく、あの夏から同じだけの時間を過ごしていたのに、環境が違ったせいで昔のようには振舞えなかった。

 葉羽は見るからに高貴なお嬢様となり、俺は虐めで逃げてきた負け犬、おまけに貧乏とさらなる修飾語がつく。

 あまりにも違いすぎて惨めになった。


「どうせまた下手くそで失敗するんだろ。そんなの見せられても困るよ。じゃあな」


 俺は本当に最低な奴だった。

 久し振りの再会の喜びを分かち合うどころか、貶してどうするんだと、自分でも嫌になってきた。

 葉羽は退院してきたばかりの病み上がりでもあるのに、どうして気遣う優しい声がかけられなかったのか。


 俺の心はあまりにも屈折しすぎて、俺に優しく接してくる人に刃を向けてしまう愚かさに、自分でもジレンマを感じるくらい奥歯を強く噛んでいた。


 俺は葉羽の顔も見ず、さっさと家の中に入って行った。

 葉羽はその時どんな顔をして俺の事を見ていたのだろうか。


 そんなに気にするのならあんな態度を取らねばよかっただけなのに、俺はその晩何度もベッドの中で寝返りを打っては苦しさで眠れなかった。