時は梅雨が始まろうとしていた頃だった。

 雨の鬱陶しい季節だったが、俺の心を代弁してくれてるようでその天気には好感が持てた。

 俺が新しく通うことになった中学は、伯母の家から歩いて20分くらいのところにあった。

 坂を上って超えた向こう側にその中学は建っていた。


 転校はすんなりできたけど、いくら学校が変わっても俺自身は変わったわけじゃないので、新しいクラスに配置されても俺は無愛想だった。


 最初は物珍しく声を掛けてくる奴もいたが、そういう奴はどことなくクラスでも派手なグループに所属してるやつらで、どうしても俺を殴ったあいつらとダブってしまう。

 そんな先入観があると、心を開くこともできず懐疑心で接するために、案の定、俺の評判は悪かった。

 それでも幸い、露骨に虐めようとする奴はおらず、その点では別に無視されようが友達がいなくとも気が楽だった。


 俺はそっとしておいて欲しかった。


 この中学の生徒達は程度がいいために、そういう俺の空気を読んで物分りがよかったのが唯一の救いだった。

 やはり地域性の問題だろうか。

 この街の人間はお金に余裕があるだけに、人間性が養われているように見えた。

 ただ無関心で、ステイタスがある分、自分に不利益になることを排除しているだけかもしれないが、理由はどうであれ、以前のような虐めがないことは安心するところだった。


 環境が確実に変わったのは、まず肌で直接実感し、次第にそれは浸透して体ごと慣れてきた。