母親は俺が学校を休むことをもちろん気にはしていたが、生活がある分働かなければならない切羽詰った忙しさで構ってられず、暫くはそっと様子を見ていた。


 そして担任は、成績が優秀な生徒が暫く学校に来なくなると不思議に思い、まずは電話が掛かってきた。

 ここで「虐められているのか」と聞かれたら、まだまだその先生は生徒の事を考えていると少しは褒めたかもしれない。

 だが先生は虐めの可能性などはなっからないと思っていたのか、俺が鬱を患っていると決めかけた様子で話してきた。


 俺が母子家庭であり、生活に余裕がない事で原因は家庭にあると思っているらしい。

 確かにそれもなんらかの要因の一つかもしれない。

 でもきっかけとなった直接の原因はやっぱり虐めに繋がると思う。


 俺はそのところを先生に、多分気がついて欲しかったのだと思う。

 自分の口で直接いうよりも、察して欲しい気持ちの方が大きかった。


 しかし、それすらの願いも叶えられず、俺は先生に失望した。

 もし俺の口から虐めを仄めかしたとしても、目立つ生徒は先生に可愛がられているだけに信じてくれないと想像できたし、言ったところでこの先生は解決してくれないとも思った。


 俺はただ聞き分けのない駄々っ子のように聞く耳を閉じ、先生の言葉など一切聞くことはなかった。

 益々荒んでご飯もろくに食べなくなっていく。

 そんな俺を見て母親はさすがに異常をみてとり、危機感を持ったのだろう。
 
 しかし、離婚してからまだ全てが落ち着いてない母親には、俺の問題は重すぎた。


 腕についた切り傷や益々鬱々と暗くなって口を閉ざす俺に、どうしていいのか分からず泣き出す仕舞いだった。