葉羽は自分のものになったサボテンを大切に抱え、玄関先でサボテン爺さんに丁寧に礼を言う。


「葉羽ちゃんは変わってるのう」


 それを言うならサボテン爺さんの方がもっと変だといいたくなったが、その変な爺さんが、真顔で葉羽を見つめてるから、変という定義がわからなくなってしまう。

 葉羽のあどけない笑顔を見れば、年寄りなら誰しもそれがとてもかわいい子供の笑顔で、天使に見えたことだろう。

 実際この俺も、会ってまだ数時間そこらだったけど、葉羽の素直さはかわいいと漠然的に感じていた。

 サボテン爺さんも葉羽がかわいいと言おうとしたのだろう。


「葉羽ちゃんには妖精の血が混じってるのかもしれないな。サボテンの声が分かるのは妖精たちだから」


「だったら嬉しいです」


 おいおい、鵜呑みにするなよと側で突っ込みながらも、俺たちはサボテン爺さんに「ありがとうございました」と頭を下げて家を出た。

 俺にも分け隔てなく「またいつでも来なさい」と別れ際に念を押してくれた。

 人に優しくされるのはやっぱり気持ちがよかった。


 また暑い外に戻れば、折角引いていた汗が再びジワリとしみだしてくる。


 たくさんのサボテンをもう一度目に収め、俺は暫しの奇妙な体験を、太陽の日差しの下で目を細めながら本当に起こったことだったのか、自問自答していた。