そんな葛藤を抱えながら、太陽の日差しを受け、汗を掻いて俺たちは歩き続けた。

 周りの家はやっぱり大きく、どの家も偉大に建っていて、この一帯が別の次元の空間に思えた。

 何かがいつもと違う、そんな気持ちが入り込みながら、よく分からないままに葉羽に案内されて、その噂のサボテン爺さんの家まで来てしまった。

 少し歩くだけで汗が沢山出てくるような夏の暑さの中、立ち止まれば、体の中の熱が益々充満して、汗がダラダラと垂れてくる。

 俺は汗を無造作に拭いながら、暫くその家を見て棒立ちになった。

 なんともでかい柱のようなサボテンが一階の高さを余裕で越えて家を取り囲んでいる。

 大きくなりすぎて倒れないように紐で家に縛り付けられて、サボテンで埋め尽くされた異様な家だった。

 それだけじゃなく色々なサボテンが鉢植えされ、それも塀の上や玄関先に所狭しと並んでいた。


「ほんとサボテンが好きなんだね」

 驚いている俺の顔を見るのが楽しいのか、葉羽は笑ってその家のインターホーンを押していた。

 中から「はい」と受け答えするかすれた声が聞こえ、「シショ、葉羽です」と応答すると、「おお、葉羽ちゃんか。ちょっと待っておくれ」と親しいやりとりが交わされた。


 そして、その後玄関のドアが開いた。