「ところで、例の件はどうなった?」
「例の件って?」
「頼んでおいただろう? 羽場美由紀の霊からいろいろ聞き出すようにと」
「あぁ、そのことか」

 たいした情報は聞き出せなかった気がするが、詠斗は美由紀から聞いた話を傑に伝えた。

 不登校気味だった仲田翼とはあまり接点がなかったこと。

 美由紀を殴った凶器は両手で掲げて持つような何か岩のようなもので、犯人は右の手首に腕時計をしていたこと。

 殴ってきた相手はやはり松村知子ではなく、男だったように思うと言っていたこと。

 ついでに、仲田翼が恐喝を繰り返していたらしいことも付け加えておいた。この辺りは警察が調べればすぐにわかることだろう。

「なるほど、羽場美由紀殺しについてはわずかだが手がかりが増えたわけだな?」

「中途半端でごめん。いろいろあって、先輩とまともに話をする時間がなくなっちゃってさ……」

「いろいろ?」

 傑の瞳がきらりと輝く。しまった、と詠斗は咄嗟に後悔した。