「……ごめん、詠斗」

 ぽん、と肩を叩いてから、紗友はゆっくりと口を開いた。

「何が一体、どうなってるの」

 動揺やら驚愕やらで紗友の顔はすっかり青白くなってしまっている。それはそうだろう。詠斗にとってはれっきとした美由紀との会話でも、おそらく紗友には詠斗の声しか聴こえていない。何やら目に見えないものを相手にしている様子の幼馴染に不信感を抱くばかり、といった雰囲気が全身からじわじわと滲み出ていた。

「端的に言えば、勘違いじゃなかったってことだな」

 昨日、紗友には「勘違いだった」と言った。どんなに大きな叫び声でさえ、この耳には届くはずがないのだと。

「聴こえるんだ――春休み中に亡くなった先輩の声が」