誰よりも自信を持って答える紗友に、「そう」と知子は紗友から目を逸らした。
「美由紀が……」
美由紀が亡くなって、まもなく二週間が経とうとしている。無事に犯人も捕まったところで再び美由紀の名を聞くことになり、どんな気持ちでいればいいのかわからないといったところだろうか。
かすかに瞳を潤ませている知子に、詠斗は静かに口を開いた。
「美由紀先輩から聞きました。大事な試合の前なのに、手首を疲労骨折したって」
無意識だろう、知子は右の手首をかばうように左手で覆った。白くテーピングされているのがちらりと見える。
「その話をしてくれた時の美由紀先輩、とても悔しそうな声をしていました。あなたの気持ちを思ってなのか、喧嘩したまま二度と会えなくなってしまったからなのか……とにかく、ひどく落ち込んでいるみたいだったんです」