思いがけない言葉が飛び出し、詠斗は眉をひそめて千佳を見た。

「私……ごめんなさい……万引きを……ッ」
「万引き?」

 これもまた予想の斜め上を行く単語だ。思わずその言葉を拾って繰り返すと、しゃくり上げている千佳の後ろで傑が「なるほど」と口を動かした。

「強要されていたんだな? 猪狩華絵に」

 傑の指摘に、千佳はこくりと頷いた。

「初めからそんなことをさせられていたわけじゃなかった……宿題を代わりにやったり、掃除当番を代わってあげたり……そんな些細なことだったの」

『「どこが些細なことなんだよ」と巧さんが』

 美由紀の声につられて振り返ると、やっぱり巧は怒っていた。なまじ体が大きいおかげか、怒りを滲ませた顔は妙な迫力を醸し出している。