日が沈み始めた頃、神社の中に下げられていた提灯に灯りがともる。未だ空はオレンジ色をしていて明るいが、彼女は何も言わずに朝陽の手を握った。
花火が上がるまでには、まだ時間がある。しかしもうすでに人が増え始め、お祭りは賑わいを見せ始めていた。
「あれ、やってみる?」
朝陽はヨーヨー釣りを行なっている屋台を指差す。彼女がコクリと頷いたのを見て、そちらへと向かう。
円形のプールの中には水が張っていて、その上を綺麗な模様をしたヨーヨーがプカプカと浮かんでいた。その光景を見ながら、××は目を輝かせる。
「綺麗……」
「ヨーヨー釣りをやるのも初めて?」
「うん。お祭りに行くのが、実は初めてだから……」
「そうなんだ」
それならば、彼女が今日は楽しい日だったと思えるようにしたい。そう思った朝陽は、二回分のこよりを買って一つを××へ手渡す。こよりの先端には針金が付いており、それをヨーヨーの輪ゴムへ引っ掛けて釣り上げるのだろう。
彼女はなるべくこよりが水の中へ沈まないようにしながら、針金を慎重に輪ゴムへ通す。しかしこよりは水に触れてしまい、針金が輪ゴムへ通ったものの、持ち上げる際に重さに耐えきれず千切れてしまった。
「あっ、落ちちゃった……」
残念そうな表情を彼女は浮かべる。
「まだ僕のがあるから、やってみなよ」
「うん」
もう一度、慎重に輪ゴムへ針金を通す。しかし今度もこよりは水に濡れてしまい、ヨーヨーを持ち上げることは出来なかった。
「また、落ちちゃった……」
そう呟いた声が震えていたことに、朝陽はすぐに気付く。思わず隣を見ると、彼女は大きな瞳から涙を流していた。
「え?! どうして泣いてるの?!」
「だって……だってぇ……!」
すぐに、ヨーヨーが釣りあげられなくて泣いたのだということに朝陽は気付く。彼女は二度とも、オレンジ色の水玉模様が入っているヨーヨーを釣ろうとしていた。きっとお気に入りになってしまったのだろう。
子どもっぽいその姿に、朝陽はくすりと微笑んだ。
「僕が取ってあげるから、任せてよ」
「……朝陽くんが?」
「うん」
そう言って、お金を払い追加のこよりを買った。なるべく水に濡れないようにして、輪ゴムへ針金を通す。そしてゆっくり持ち上げると、ヨーヨーは案外あっさりと取れてしまった。
彼女は泣き顔から一転、パッと笑顔の花が咲く。
「とれた! とれたよ!」
「はい、プレゼント」
「ありがと! 朝陽くん!」
笑顔のまま、彼女は輪ゴムに指を通して、手を上下に振る。そうすると、水の入った風船が手のひらでバウンドして、反対方向へとゴムを伸ばしながら飛んで行った。それを何度か子どものように繰り返す。
彼女の元気な姿を見て、朝陽はホッと胸をなでおろした。家を出るときはまだ思いつめた表情をしていて、笑顔を浮かべる余裕がないように見えた。
しかし彼女自身が気持ちを入れ替えたのか、それとも祭りの雰囲気に押されたのかはわからないが、今ではいつも通りの笑顔を見せている。
それから二人は射的のコーナーで遊び、屋台で売っていたフランクフルトを食べて、お祭りを楽しんだ。
花火が上がるまでには、まだ時間がある。しかしもうすでに人が増え始め、お祭りは賑わいを見せ始めていた。
「あれ、やってみる?」
朝陽はヨーヨー釣りを行なっている屋台を指差す。彼女がコクリと頷いたのを見て、そちらへと向かう。
円形のプールの中には水が張っていて、その上を綺麗な模様をしたヨーヨーがプカプカと浮かんでいた。その光景を見ながら、××は目を輝かせる。
「綺麗……」
「ヨーヨー釣りをやるのも初めて?」
「うん。お祭りに行くのが、実は初めてだから……」
「そうなんだ」
それならば、彼女が今日は楽しい日だったと思えるようにしたい。そう思った朝陽は、二回分のこよりを買って一つを××へ手渡す。こよりの先端には針金が付いており、それをヨーヨーの輪ゴムへ引っ掛けて釣り上げるのだろう。
彼女はなるべくこよりが水の中へ沈まないようにしながら、針金を慎重に輪ゴムへ通す。しかしこよりは水に触れてしまい、針金が輪ゴムへ通ったものの、持ち上げる際に重さに耐えきれず千切れてしまった。
「あっ、落ちちゃった……」
残念そうな表情を彼女は浮かべる。
「まだ僕のがあるから、やってみなよ」
「うん」
もう一度、慎重に輪ゴムへ針金を通す。しかし今度もこよりは水に濡れてしまい、ヨーヨーを持ち上げることは出来なかった。
「また、落ちちゃった……」
そう呟いた声が震えていたことに、朝陽はすぐに気付く。思わず隣を見ると、彼女は大きな瞳から涙を流していた。
「え?! どうして泣いてるの?!」
「だって……だってぇ……!」
すぐに、ヨーヨーが釣りあげられなくて泣いたのだということに朝陽は気付く。彼女は二度とも、オレンジ色の水玉模様が入っているヨーヨーを釣ろうとしていた。きっとお気に入りになってしまったのだろう。
子どもっぽいその姿に、朝陽はくすりと微笑んだ。
「僕が取ってあげるから、任せてよ」
「……朝陽くんが?」
「うん」
そう言って、お金を払い追加のこよりを買った。なるべく水に濡れないようにして、輪ゴムへ針金を通す。そしてゆっくり持ち上げると、ヨーヨーは案外あっさりと取れてしまった。
彼女は泣き顔から一転、パッと笑顔の花が咲く。
「とれた! とれたよ!」
「はい、プレゼント」
「ありがと! 朝陽くん!」
笑顔のまま、彼女は輪ゴムに指を通して、手を上下に振る。そうすると、水の入った風船が手のひらでバウンドして、反対方向へとゴムを伸ばしながら飛んで行った。それを何度か子どものように繰り返す。
彼女の元気な姿を見て、朝陽はホッと胸をなでおろした。家を出るときはまだ思いつめた表情をしていて、笑顔を浮かべる余裕がないように見えた。
しかし彼女自身が気持ちを入れ替えたのか、それとも祭りの雰囲気に押されたのかはわからないが、今ではいつも通りの笑顔を見せている。
それから二人は射的のコーナーで遊び、屋台で売っていたフランクフルトを食べて、お祭りを楽しんだ。