二人は堤防の縁ぎりぎりを、足元も見ずに駆けていく。

その危うさに、ぞっと背筋が寒くなる。

親はどこにいるのだろうかと首を巡らせると、父親らしき人物がずいぶん離れたところで釣糸を垂らしていた。

こちらは見ていない。

子どもの海遊びの危険さを認識していないらしいその姿を見て、かっと身体が熱くなる。

今までにも、釣り人が連れてきた幼い子どもが海辺で危険な遊びをしているのを何度も見てきた。

そのたびに危ないなあとは思っていたけれど、だからといって見知らぬ子どもに危ないよと声をかけるのも、親に気をつけるように言うのも、なかなか難しい。

でも、『前』に彼らが走り回るのを見たときに、勇気を出して声をかけておけばよかった。

そうしたら、こんなことにはならなかっただろうに……。

そんな、どうしようもないことを考えていたら、また気分が落ち込んできた。

一度目を閉じて、ゆっくりと瞼をあげる。

広い広い海。

高い高い空。

美しい景色だ。

ふうっと大きく息を吐いて、両頬を思いきり叩いて気合いを入れる。

こんなところでぼんやりしていたって始まらない。

どうにもならないことはたくさんあるけれど、どうにかできることも確かにあるのだ。

さあ行こう、と自分を励まして、私は立ち上がった。