夏の暑さも、陽射しの強さも、アスファルトの熱さも、影の濃さも、流れる汗も、湿る肌も、今の私には全てが惜しく、愛おしかった。

「なー、何食いたいー? 凪沙ー」

優海がちらりと振り向いて訊ねる。

「なんでもいーよ、優海が食べたいもので」
「そうか? どうしよっかなー、ハンバーガー、牛丼、ラーメン、定食、あーでも冷たいもんもいいな。何がいいかなー」
「候補多いなー」

車がほとんど通らない住宅地の生活道路に入ったので、少しスピードをあげて優海に並ぶ。

私の大好きな、優海と一緒に自転車を走らせる時間。

これが最後になるかもしれないから、少しでも長く並んでいたかった。


悩んだ末、優海は駅前にあるイタリア料理のファミレスを選んだ。

安くて美味しいので若者や子ども連れの家族に人気のチェーン店だ。

私はドリアを、優海はパスタとピザを注文し、さらにサラダも頼んでふたりで分けて食べることにした。