「あの、女将さん。このレースのカーテンも洗濯ですか?」

「そうそう! 悪いけど、こっちのと一緒にまわしてきてくれる?」

「わかりました」


十二月三十日。

今年最後の日を明日に控えた今日は、朝からみなか屋の大掃除を手伝わせてもらっていた。


「ほんとありがとね。助かるわ」

「いえ、年末年始のお休みにも泊めていただけて、こちらこそありがとうございます」


本来、三十日から一月二日まで民宿は毎年冬休みだというみなか屋。

私は今回特別に宿泊させてもらっているので、女将さんの腰が調子悪いこともあるし、何かできることがあればとお手伝いを買って出たのだ。


「八雲の自由研究もそろそろ完成するみたいだし、凛ちゃんが来てくれてからうちは大助かりよ」


本土に帰らないで住み込みで働いてもらいたいくらいだわ、なんてケラケラ笑って調理場の掃除をする女将さん。

彼女の横では、旦那さんが歯ブラシを手に角の汚れを擦っている。

「ねえ、あんたもそう思うでしょ?」と女将さんが話しかけると、旦那さんは動かしていた手を止めて「そうだな」と普段はあまり笑わない顔に微笑みを浮かべてくれた。

必要だと言ってもらえるのが嬉しくて胸の奥が熱くなる。