「マナカ見て!」
布団を敷き終え思案に暮れていた私を呼ぶ声。迅が勢いよく寝室の襖を開けた。
目の前に突き出された右手にはよくわからない黒い塊が載っている。目を凝らすとそれがもぞっと細長い手足を動かした。
「きぃやぁぁぁ!!!」
「うわ!うるせ!」
絶叫する私に耳をふさぐ迅。その手には黒くて羽が茶色い昆虫がいる。触覚が長くブンブン唸るような鳴き声が聞こえる。
「な、な、な、なに、それ」
「カミキリムシの仲間だと思うんだけど、詳しく知りたいから携帯貸してもらおうかなって」
「私の携帯で画像検索なんかかけないで!!履歴が残るのも嫌!!」
悲鳴をあげて、ざざっと寝室の古い桐箪笥まで後退する私に、迅はとぼけた顔だ。
「あれ?マナカ、虫嫌いだっけ」
「虫が好きな女の子の方が少ないわよ!!」
居間は扇風機と網戸越しの風で暑さをしのいでいるけれど、どうやら網戸にくっついていたらしい。迅はしぶしぶと庭の栗の木にカミキリムシを放しに行った。
私は緊張も何もどこかへ行ってしまい、どっと疲れが湧いてきた。もういいや、虫にかかずらっている迅なんか知らない。さっさと布団に入ってしまおう。
目を閉じると泥のような眠りにあっさりと沈んでしまった。
私たちの初日はこうして終わっていった。
布団を敷き終え思案に暮れていた私を呼ぶ声。迅が勢いよく寝室の襖を開けた。
目の前に突き出された右手にはよくわからない黒い塊が載っている。目を凝らすとそれがもぞっと細長い手足を動かした。
「きぃやぁぁぁ!!!」
「うわ!うるせ!」
絶叫する私に耳をふさぐ迅。その手には黒くて羽が茶色い昆虫がいる。触覚が長くブンブン唸るような鳴き声が聞こえる。
「な、な、な、なに、それ」
「カミキリムシの仲間だと思うんだけど、詳しく知りたいから携帯貸してもらおうかなって」
「私の携帯で画像検索なんかかけないで!!履歴が残るのも嫌!!」
悲鳴をあげて、ざざっと寝室の古い桐箪笥まで後退する私に、迅はとぼけた顔だ。
「あれ?マナカ、虫嫌いだっけ」
「虫が好きな女の子の方が少ないわよ!!」
居間は扇風機と網戸越しの風で暑さをしのいでいるけれど、どうやら網戸にくっついていたらしい。迅はしぶしぶと庭の栗の木にカミキリムシを放しに行った。
私は緊張も何もどこかへ行ってしまい、どっと疲れが湧いてきた。もういいや、虫にかかずらっている迅なんか知らない。さっさと布団に入ってしまおう。
目を閉じると泥のような眠りにあっさりと沈んでしまった。
私たちの初日はこうして終わっていった。