「ひいばあちゃんが亡くなって、今はうちのお袋と春香おばちゃんが管理してるんだ。たまに空気を入れ替えに行ったり、修繕が必要なとこを業者に頼んだり」
迅がとっておきの話をするように身を乗り出した。
「俺とその家に行かないか?夏休みの間中」
「え!?迅と!?」
驚いて聞き返し、慌てて自分の声の大きさに口を抑える。だって、それくらい衝撃だったんだもん。迅とふたりでそんなところに行って、ふたりきりで過ごすなんて。
「うち、去年まで夏中に何度かあの家に行ってんだよ。聖が田舎っつうのを体験したがってさ。電気も水道もガスも止めてるだけだから、電話一本で復旧できるし、鍵はうちのお袋か春香おばちゃんが持ってるはず」
迅は得意げに話す。そうなんだ。途端に現実味のある提案に感じられて、私の心はぐっと動いた。
「一度春香おばちゃんと離れてみたらどうだ?お互いの大事さって近くにいると見えなくなるかもしんないよ?勉強に集中したいとか言えば、春香おばちゃんも聞いてくれねーかなぁ」
「そんなの無理だと思う。……お母さん、私が自分のコントロールから外れるのが嫌なんだよ。離れて暮らすなんて聞いてくれるわけない」
答えながら、裏腹に私の心はその家に飛んでいた。迅と暮らす。ふたりで。
迅のことを知っている人間がいなければ、私たちは並んでお日様の下を歩ける。迅は自由に振舞える。
ずっと考えてきた。迅の最後の日々を、この部屋に閉じ込めて終わりにしたくない。
「ほら、俺も幽霊だってバレずに過ごせるしさぁ。マナカと春香おばちゃんの喧嘩に乗じてるみたいで悪いけど……」
迅本人もそんなことを言うから、考えていないわけじゃないのだ。
迅と過ごす最後の夏。ふたりっきりは最初で最後。それなら、一生分の幸せをここでもらってもいいんじゃないかな。だって、迅が消えてしまったら私はまたこの色のない世界に放り出されてしまうんだもの。
「……明日、話してみようかな」
呟くように答えていた。
迅がとっておきの話をするように身を乗り出した。
「俺とその家に行かないか?夏休みの間中」
「え!?迅と!?」
驚いて聞き返し、慌てて自分の声の大きさに口を抑える。だって、それくらい衝撃だったんだもん。迅とふたりでそんなところに行って、ふたりきりで過ごすなんて。
「うち、去年まで夏中に何度かあの家に行ってんだよ。聖が田舎っつうのを体験したがってさ。電気も水道もガスも止めてるだけだから、電話一本で復旧できるし、鍵はうちのお袋か春香おばちゃんが持ってるはず」
迅は得意げに話す。そうなんだ。途端に現実味のある提案に感じられて、私の心はぐっと動いた。
「一度春香おばちゃんと離れてみたらどうだ?お互いの大事さって近くにいると見えなくなるかもしんないよ?勉強に集中したいとか言えば、春香おばちゃんも聞いてくれねーかなぁ」
「そんなの無理だと思う。……お母さん、私が自分のコントロールから外れるのが嫌なんだよ。離れて暮らすなんて聞いてくれるわけない」
答えながら、裏腹に私の心はその家に飛んでいた。迅と暮らす。ふたりで。
迅のことを知っている人間がいなければ、私たちは並んでお日様の下を歩ける。迅は自由に振舞える。
ずっと考えてきた。迅の最後の日々を、この部屋に閉じ込めて終わりにしたくない。
「ほら、俺も幽霊だってバレずに過ごせるしさぁ。マナカと春香おばちゃんの喧嘩に乗じてるみたいで悪いけど……」
迅本人もそんなことを言うから、考えていないわけじゃないのだ。
迅と過ごす最後の夏。ふたりっきりは最初で最後。それなら、一生分の幸せをここでもらってもいいんじゃないかな。だって、迅が消えてしまったら私はまたこの色のない世界に放り出されてしまうんだもの。
「……明日、話してみようかな」
呟くように答えていた。