「迅くんが亡くなって、ようやく勉強に集中できるかと思ったのに。あなたは全然駄目ね!」

その言葉は、容赦なく私を刺した。

迅がいなくなれば集中できる?
お母さんはそんなことを思っていたの?
迅への恋心で私がやる気がないと思っていたの?
迅が死んだことをそんなひと言で終わらせてしまうの?

「……迅が死んでよかったと思ってるなら、……お母さんは頭がおかしい」

気づいたら言っていた。
お母さんがはっとした顔をした。自分の言葉の不適切さに気づいたのかもしれない。

私の中の大事な部分はすでにぐちゃぐちゃにすりつぶされていた。
迅は死んでしまった。迅の人生は終わってしまった。それなのに!

「お母さんの言う通りに勉強してきたじゃない!お母さんの言う通りに一位を取り続けてきたじゃない!何をすれば気に入るの?何をしなければ正解なの?模範解答がわからないのよ!大学に受かっても、一流企業に入っても、お母さんは一生私に駄目出しをし続けるんでしょう!?」
「真香」
「いちいちいちいち……!お母さんの顔色を窺って暮らすのは苦しいの!怒られないように振舞うのは嫌なの!」

私はかぶりを振って、叫んだ。

「私はお母さんの理想にはなれない!」

言うだけ言って、お母さんの顔すら見ずに、私は部屋に入り勢いよくドアを閉めた。
怒鳴ったのなんて久しぶりだ。ドアを背にばくばく言う心臓を押さえる。

ドアの外の母はしばらくそこに立っていたようだったけれど、やがて足音は遠ざかっていった。